2022.01.6
初期衝動も蘇る、はじまりの場所へ
for EEX.
Volume 3
ルーツって簡単に言えば、今まで遊んできた場所、そこで経験してきた良いことや悪いこと、当たり前に過ぎていった日常や景色のこと。その人だけのストーリーがその人のカラーになっていくから、ここでは13人のアーティストの方々のルーツが宿る、原点と今を繋ぐ場所での写真とコメントを届けたい。そんな写真たちが、逆にスタートを切ったばかりである<EEX.>の ルーツを宿す写真にゆくゆくはなればいいな、という想いも込めて。
長塚健斗(Musician)📍立川
“今の自分があるのも、色々なことを一緒に経験してきた仲間がいるからだと、心から思っています”
「今回の”ルーツの宿る始まりの場所”というテーマの中で選んだ、現在の活動の原点&ルーツになっている場所は、中高生時代一番多くの思い出がある土地の立川です。通学路の途中だったということもあり、友達と遊んだことも、ライブハウスで演奏したことも、10代の頃の思い出はこの場所が一番濃いですね。当時の具体的なエピソードで言うと、学校帰りに駅近くのスタジオに行って練習して、終わったらなけなしのお金を握りしめて駅前のマクドナルドでチーズバーガーとポテトのSを食べる、なんてことをよくやってましたね。あの時、いわゆる青春と呼べることをたくさん一緒にやっていた仲間と、今また大人になってから同じ業界で仕事を一緒にできているのも嬉しいですし、なにより当時のバンドメンバーの一人がWONKの井上だったりと、この場所&時期で生まれた色々な出会いが、一番今に活きていると思います。そのような人との出会いがなにより大切だなと感じますし、今の自分があるのも、色々なことを一緒に経験してきた仲間がいるからだと、心から思っています」。
PROFILE 1990年、東京都生まれ。東京を拠点に活動するエクスペリメンタルソウルバンド『WONK』のボーカリスト。音楽だけでなく、ファッション誌やアパレルブランドのモデル出演や、食の分野の造詣も深く、ビストロの立ち上げに料理長を務めた経験も。@kentwits
MASAKO.Y(Artist)📍原宿
“アーティストとして、作品と生きていこう決めた場所”
「私は4年半前まで、3か国に単身留学をしていて、その経験の中でアーティストを志そうと決めたんです。オーストラリアの高校を卒業した後、NYでグラフィックデザインを学び、その後ロンドンにある芸術大学セントラル・セント・マーチンズでファインアートを勉強しました。写真に載っている私の代表作で、作品のタイトルでもある”LIKE JESUS JUST MADE THIS” という言葉は、実際にNYで制作をしている時に偶然出会った言葉でもあります。だから、私にとってのルーツはそんな海外生活の中にあるのですが、帰国後日本でアーティスト活動を始め、今に繋がる原点はどこかなと考えると、それは原宿だと思いました。原宿では、3年前個展も開催しました。制作期間もここ原宿にスタジオを移したので、この期間は様々な専門領域の異なる先輩方との出会いもあり、様々な交流をさせて頂きました。私にとっては全てが新鮮でここ原宿で制作発表をしていなければ、出会えなかったご縁だと思い、今ではとても貴重な時間だったと感じています。原宿で開催した個展に来て下さった方々は、様々な国籍の方が多く、「自信はある、でも売れるのかな」と自分の中では高値をつけて勝負に出たメインの作品は、個展の前をふらっと立ち寄った日本人ではなく、ニューヨークのコレクターの方が購入して下さったんです。日本にいながらにして、海外の方にも受け入れてもらえる個展が出来たかなと自信を持つことが出来きました。原宿は面白いパワーを持った場所なんです」。
PROFILE オーストラリア、ニューヨーク、ロンドンに単身留学。2018年から東京を拠点にアーティストとして活動を開始。“Painting Collage”= ペインティングしたものをコラージュする手法を主に使い作品を発表し、様々な媒体で作品提供を行う。 活動の視野を世界に広げ海外からのオファーも集まっている。@m24artspace
どんぐりず(音楽ユニット)📍群馬県桐生市
“僕らがいることが普通だから、僕らも普通でいられる、過ごしやすい街”
「生まれ育った街。そして今もこれからも住んでいく街です。プレイヤーが少ない街なので、同世代のミュージシャンと切磋琢磨していたとかもないですし、クラブも今はない。だから、音楽的にルーツになっているポイントは、他の都市に比べたら少ないと思います。2人でアコースティックギターで歌ってばかりいました。でも20歳ぐらいの頃、セカンドアルバムが完成したあたりからは、レコード屋の人や先輩たちと付き合うことも多くなって、今は色んなジャンルのミュージシャンや楽曲を教えてもらうことは多くなりましたね。もともと、現行の音楽ばかり聴いていたので、先輩たちから得るインプットには助かってます(チョモ)」。「僕らが10代の頃は、同世代の桐生市の仲間の間でハードコアが流行ったんです。その頃、僕は坊主で全身ミリタリー、チョモはロン毛で刈り上げで耳も小指サイズぐらい穴を拡張していて、そんな2人でママチャリ乗って山から降りてライブハウスに行って、モッシュばかりしていましたね。モッシュ中に僕のパンチがチョモに当たって、歯が折れたこともありましたよ(笑)。この街は、僕たちが人気になっても、きっとチヤホヤされないと思うんです。僕らがいることが普通なので、僕らも普通でいられるんですよ。このスタジオも気に入ってるし、この街がちょうど良いんです。だからきっと、もっと東京をはじめたとした色んなところでライブが増えても、桐生市にいると思います。東京に行ったら、色んな遊びの連絡がきて、遊びきれない。僕らはこの街の距離感がちょうど良いんです(森)」。
PROFILE ラッパー森、トラックメイカー・プロデューサーのチョモからなる二人組ユニット。音源、映像、アートワークに至るまでセルフプロデュースを一貫。ウィットにあふれるグルーヴとディープなサウンドで中毒者を続出させている。@dongurizu
machìna(ミュージシャン)📍原宿・千駄ヶ谷
“自分が納得できる空間を作るということは、クリエイティブをやる上でとても大切なプロセス”
「今回は、「初期衝動も蘇る、はじまりの場所へ」という東京での自分のルーツとなる場所がテーマの撮影だったので、撮影の場所として自分のスタジオがある原宿・千駄ヶ谷エリアを選ばせて頂きました。このスタジオでは、最近のアルバムを含め、2枚のアルバムを完成させました。「素直でいること」、「自分の色を認識していること」、そして「自分のリミットをいつも疑うこと」という3つのことをクリエイティブを行う上で、私は大切にしています。この3つの大切なことをより強く意識できる場所であり、自分が納得できる空間を作るということは、クリエイティブをやる上でとても大切なプロセスだと思っています。 2021年10月にリリースした最新アルバム『Compass Point』もこのスタジオで完成させたのですが、草案と最初のレコーディングは、標高2,932mの長野県と富山県の間にある白馬岳のふもとの小さな隠れ家のような山小屋で制作しました。あのミツのことを認識しながら、作られた作品であり、まるで内側からコンパスが指し示すかのように、新しい方向性が明確になったのです。そんな作品になったのも、良い場所でできたからだと思います。自分の内面を迎え、次の方向性を見つけていた作品の『Compass Point』をぜひ、machina.linkでチェックしてみてください」。
PROFILE 韓国出身で東京を拠点に活動しているミュージシャン。エレクトロニック・サウンドをベースとし、モジュラー・シンセサイザーや、アナログ・シンセサイザーを駆使し音楽と、ジャズで培われたボーカルをのせるスタイル。オーディエンスを巻き込むエネルギッシュなライブで世界中のコアな音楽ファンを魅了している。@yeoheemusic
ナガノショウヘイ(RESERVOIR Vo./Gt.)📍下北沢 DaisyBar
“多くの人との出会いが生まれる場所。そのひとつひとつが情報の肥やしになっています。
「数々のミュージシャンやアーティスト、役者やファッション関係の方々が交わる憩いの地である下北沢。バンドマンの自分にとって間違いなく原点であり、10代の頃からの憧れの場所です。下北沢では数々のミュージシャンと対バンをしたり、何度もライブハウスに足を運んでいました。10年以上前に石崎ひゅーいさんが当時組んでいたバンド『astrcoast』を観たんです。そのライブがとにかく印象的で、自分のターニングポイントになるほど、人生を大きく動かしたライブでした。他にも下北沢では、多くのミュージシャンやバンドとの出会いがありました。仲間とのくだらない話しも、先輩のアドバイスも、後輩の勢いも、今も昔も変わらずそこはあって。そのひとつひとつが情熱の肥やしになっています。自分がいつも憧れるのは、遊びも仕事も全力で楽しんでいる人。そして、古きを大切にしていて常に新しいものにアンテナを張っている人。そういう人には決まって色んな人が集まっていて、面白い人を集めることができるんです。自分もそうでありたいし、そうであり続けてたいですね。この下北沢で出会った人たちを見ていると、心からそう思えるんです。この日、撮影させて頂いたこの『DaisyBar』は、定期的に自主企画のライブをさせてもらっているライブハウスです。先日リリースした2nd EP『water’s edge』のリリースワンマンライブもさせて頂きました。この場所から、どんどんRESERVOIRを大きくしていきたいですね」。
PROFILE 日本語ロック・バンドRESERVOIRのギターボーカル。疾走感のあるメロディと儚い歌詞、切なさ感じるハスキーヴォイスを武器に東京を中心に活動中。エモくてアツいライブと、どこか懐かしいアートワークで話題を集めている。最新EP『water’s edge』も要チェック。@shohei_reservoir
- Photograph_Hidetoshi Narita
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