
2023.08.25
100%スケーターが描く
反骨心から生まれるアート
Steve Olson
今やオリンピックの正式競技にも採用され、つい先日にはストリートスケボーの世界最高峰大会=「SLS」が初めて東京で開催されるなど、シーンでさらなる話題を集めているスケートボード。そんなホットなタイミングで、なんとスケートカルチャーのパイオニアとしても知られているSteve Olson が、自身の個展とポップアップのため来日すると聞きつけ速攻で取材を依頼! カルチャー黎明期から早くも60年弱が経過した今、アートと向き合う時間が増えレイドバックな日々を送るレジェンドは、変わらずに好きなことをやり続けるまさに100%スケーターの鏡だ。
単なる地元の遊びが
世界を代表するカルチャーに
Steve Olson(以後S):ストリートカルチャーの定義ってなんだと思う?
-そんなSteveの質問から始まった今回のインタビュー。事前に何を聞こうかある程度考えてはいたけれどそんな間もなく、話はディープな方向へ(笑)。
S:マジで最近はそればかり考えているよ。今でいうストリートカルチャーは単なる市場のための言葉になってるだろう? 本当の意味でのストリートではなくて物を売るための謳い文句ってことだよ。道で滑っていればストリートスケーター? 数え切れないほどのブランドが出てきたけど、それはただカルチャーを売っているだけで体現しているわけではないよな。
–まさにスケーターらしい反骨心感じる言葉に少々面を食らっていたけれど、現代において「ストリートカルチャーって何?」と聞かれてその場で答えられる人が多くないのも事実だろう。ではそもそも、その“ストリートカルチャー”という言葉はどのように誕生していったのだろうか。
S:俺は1966年から地元で仲間たちとスケートボードを初めたんだけど、最初はサーファーが波のない時の遊びとしてスケートを始めたんだ。当時住んでいたカリフォルニアで風俗街にステッカーを貼ったりもしてたけど、その当時はすべてが単なる遊びでしかなかった。そこから、街で遊んでいたキッズがストリートカルチャーと定義され始めんだけど、本人達はそうは呼んでなかったな。そこからいろいろなヤツがスケボーやグラフィティで遊ぶようになっていったんだ。同時にストリートの遊びからお金を稼ぐようなヤツも出てきたよ。
-最初はただのストリートの遊びだったものが次第に盛り上がりを見せていくなか、 周りにはお金儲けを目的とした人が増えていったそう。ストリートの人口が増え、カルチャーが盛り上がっていくのはとても素晴らしいことだけど、その反面カルチャーの本当の醍醐味を知る人も少なくなっていったのだとか。それでもSteveはブレずに、今日まで多様なアプローチでストリートカルチャーを体現し続けてきた。
S:こうやって最近はいろいろ考えちゃうんだよ。年も重ねて客観的に物事を見れるようになったのかもな。でもとにかくストリーカルチャーは素晴らしいんだよ。だから俺は今でもストリートに生きているんだ。
スケボーから得たアイデアを
オリジナルのアートで形に
-スケートやサーフを長きにわたり体現してきたSteveだけど、意外にアートの側面を知っている人はそう多くはないだろう。そこで、まず聞いてみたいのはのはなぜSteveがアートを始めたのかということ。
S:かなり昔からアートを作っていたんだけど、もともと兄弟がスプレーアーティストをやっていて、サーフボードにエアブラシでペイントをしていたんだ。それをずっと見ていたからアートはかなり身近な存在だったんだよ。彼はかなり才能のあるアーティストで、ニューポートビーチのカルチャーの礎を築いたアーティストでもある。確か80年代初頭の話かな。
-兄弟の影響もあり、幼い頃からアートに触れその感性を十二分に磨いてきた幼少期。やがて、Steveが老舗スケートブランド〈SANTA CRUZ〉のライダーとして活躍するようになり、リリースしたシグネチャーボードはそのほとんどが兄弟によってデザインされたというのも素敵な話だ。そんなSteveに自身の転機となる出来事が訪れる。
S:その時たまたまexcite.comっていう会社に広告の仕事をしている友達がいて、そいつが会社で大きなアートキャンペーンをやるっていって、俺のことも紹介したいって話をくれたんだ。俺はアートなんか作ったことがなかったけど、周りのヤツらに教わって手探りで作品をメイクしたよ。 ヴィンテージのサーフボードをキャンバスに貼り付けて、その後ゴミ収集場に行ってカーエンブレムを回収しに行ったんだ。キャデラックとかシボレーとか色々あるなかで、9インチくらいのフューチュラのエンブレムをゲットして、サーフボードの先端に嵌め込んだんだ。初めての作品だったのにみんなが驚いて褒めてくれたのを今でも覚えているよ。そこで、自信というか好奇心がどんどん湧いてきたんだ。それがまさにアートを始めたきっかけだったと思う。
-Steveの作品で象徴的なのは、鋭く尖ったトゲトゲしいデザインやメッセージ性の強いレタリング。今となってはアクションペインティングと呼ばれいるが、そのオリジナルなスタイルは一体どこから来ているのだろうか。
S:サーフ、スケート、スノー。俺のアートは100%ここから影響を受けている。それは多くのことにも言えるんだけど、まず横乗りカルチャーは基本的にルールも縛りもなくて自分の好きなように滑るだろう? それがアートと上手くリンクしたんだよ。具体的に言えば、線を描くってことなんだけど、例えば一定の角度からスケートボウルに入ったり、縁石に入ったり、車を運転する時だって、自然とみんな線を引いているんだよ。それが自分のアートのベースでスタイルになっていることに間違いはないね。
-本人が頭で思い描いたスケートやサーフのイメージがアートになって還元されていく。時に激しく水滴を飛ばすように描く部分はサーフィンをしている時に見た波の水しぶきそのものだという。まさに横乗りからダイレクトにインスピレーションを得て描かれるアートは、ダイナミックなパワーに満ち溢れている。 そしてほかにもインスピレーションを受けた人物には意外な名前も。
S:日本のバンドカルチャーにはかなり影響を受けたよ、 彼らは独特なスタイルがあるんだ。Black Catっていうバンドは、メンバー全員が黒髪でタフな体つきをしていたんだ。今までの日本人のイメージとはかけ離れていたからとてもクールに思えたよ。他にもPlastics、 The.5.6.7.8.sも最高にクールだよ。そう言えば思い出したけど、竹下通りにいる原宿ガールも大好きなんだ(笑)。
-ストリートカルチャーをベースに、パンクロックなどからも影響を受けていたSteve。時には、業界のルールや縛りに苦労することもあったそうだけど、それでもブレずに自分の好きなサーフ&スケートのアイデアを、アートという形にアウトプットし続けてきた。お金やフェイムには見向きもせず、自分がフィールしたものだけを作り続けるその姿は、理屈抜きでかっこいいし、きっと社会に出て葛藤するユースにもダイレクトに突き刺さるはず。好きなことをやり続ける大切さを、Steve Olsonは僕たちに教えてくれる。
『WHYISWHAT』
-LAUNCH RECEPTION EVENTS-
@JOURNAL SATNDARD 表参道
-「JOUNARL STANDARD表参道店」にて1日限定で開催されたPOP UPには、レジェンドをひと目見るため、多くのヘッズが駆けつけた。最後に、今回のPOPUPについて伺ってみた。
S:今回のイベントは旧友のToshiがいろいろサポートしてくれて実現したんだ。彼がLAでAlexと一緒にアパートに住んでいたのがキッカケで、自然と仲良くなっていったんだ。ずっと一緒に何かやろうよって話してて、ちょうどいいタイミングでToshiの友達が「JOURNAL STANDARD」で働いていたから、日本でやっちゃおうみたいなナチュラルな感じで始まったよ。それでせっかくだからってことで〈WHY IS WHAT〉のローンチもやることになったんだ。Toshiには本当に感謝してるよ。このブランド名は、物事に対して何にでも疑問をなげかけることからきている。例えば、「なんで宗教は宗教なんだ?」とかね。すべては疑問から始まると思っているし、それでこそいい世界が生まれるんだと思うよ。


- Photograph_Hideaki Nagata
Steve Olson
Profile
ロングビーチ、カリフォルニア出身。小さい頃からサーフ&スケートに興味を持ち、カルチャーの黎明期からシーンを牽引してきたパイオニア的な存在。スプレーアーティストだった兄の影響も受け、並行して自身のアートにも力を注ぎ、多彩に活動中。そのムーブがもっとも注目されているアーティストの一人だ。
instagram: @mrolson
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