![無限のアイデアと実現するパワーで<br>時代をつくるアーティストたち<br>VOL.02<br>GUCCIMAZE](https://ollie-magazine.com/admin/wp-content/uploads/2020/05/japanesetraditionallogo-1-e1604468881498.jpg)
『NEO JAPAN』と名付けられた、家紋のような和テイストを取り入れたジャケ風のグラフィック。
OTHER2020.05.25
無限のアイデアと実現するパワーで
時代をつくるアーティストたち
VOL.02
GUCCIMAZE
Ollie 2019年4月号 Vol.240より
逆輸入のような形で火がついた
メタリック&ダークな世界
一見してわかる通り、とにかくトゲトゲしくてインパクト抜群。ブラックを基調とした背景に描かれるアグレッシブなグラフィックを、パーティのロゴやCDジャケットなどで目にしたことがある人も多いはず。世界中のHIPHOPアーティストやクルーがラブコールを送るGUCCIMAZEは、海外から逆輸入のような形で人気に火がついた、次世代を担う1人だ。
![](https://ollie-magazine.com/admin/wp-content/uploads/2020/05/theinternatiiional-e1604468874713.jpg)
![](https://ollie-magazine.com/admin/wp-content/uploads/2020/05/youthofparis-e1604468868679.jpg)
左_話題のパリ発新鋭ウェブメディアYOUTH OF PARISのマーチャンダイズ用アートワーク。 右_韓国で話題のニューブランド〈The Internatiiional〉に提供したグラフィック。
昨年開催されたU.S.ラッパーPost Maloneのぽ覆うアップ時に制作したロゴデザイン。
スタイルのルーツにある
湘南のグラフィティアート
アートや音楽のシーンにいて、最近よく聞くGUCCIMAZEという名前。特に驚かされたのは、ニッキー・ミナージュが昨年の8月にリリースした、ニューアルバム『Queen』のタイトルロゴを手掛けていること。それまでも音楽イベントのフライヤーなどで、GUCCIMAZEのアートワークを見かけることが多かったが、『Queen』以降、活躍の場が一気に広がっている気がする。その名前や作風だけを見て、最初は海外のグラフィックデザイナーと勘違いしていたが、GUCCIMAZEことYUTA KAWAGUCHIさんは、東京を拠点とするアーティスト。
メタリックな質感で3D調に描かれるグラフィック&毒々しい原色系の色使いが個性的で、ダークな雰囲気が作品の隅々から滲み出ている。「若い頃は壁に描かれているグラフィティを見て、“くぅ〜カッコいい!”って1人で思っちゃうような子供だったんですよ。地元が湘南の方なんですが、その頃はSCA’INOなどのクルーが描いた絵を見て感動していたんです。身の回りにたくさんあったので、自然と見る機会も多くて、家でマネしてノートに描き込んだりしていました。あとは実際に見ていたわけではないのですが、大阪のCASPERさんとか。そんなグラフィティカルチャーに触れていたことがキッカケで美大に通うことになりましたからね。文字のデザインが特徴的でカッコいいグラフィティは、ルーツの1つだと思います」。
GUCCIMAZEが描く先端が鋭利で攻撃的なロゴはタイポグラフィに分類されるが、その形状の原点は小学生の頃から好きだったストリートのグラフィティ。GUCCIMAZEは武蔵野美術大学を卒業し、会社員としてデザインをやっていた。「ファッションに関する仕事だったんですが、就業後に家で夜な夜な自分の好きなデザインを制作していたんです。そのときはコラージュ的なデザインが多かったですね」。その頃に制作したデザインの発表の場は、TumblrなどのSNSだった。
「当時、同時にタイポグラフィも作っていたんです。文字のデザインをデジタルで作るようになってからやっていなかったなと思って、AからZまでのフォントを作ったり。そういうことを続けながらTumblrにひたすら作品を投稿し続けていたある日、タイポグラフィに良い評価が付いていることに気づいたんです。特に海外から。好きでやっていただけのことなんですが、これは意外と需要があるのかもしれない、と感じて徐々に今のスタイルに移行していったんです」。
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左上_日本初の気鋭マガジンskydiving magazineに提供した作品。 左下_日本のファッション&HIPHOPメディア、FNMNLのイベントで販売されたTシャツのデザイン。 右_ロンドン発のクリエイティブなイベント兼コミュニティ、BOILER ROOMのマーチャンダイズとして制作されたグラフィック。
悪役がカッコいいという
幼少期の感覚が今に繋がる
そうして仕事を続けながら自身のスタイルを構築し、2018年に独立。では、こういった禍々しさを感じる風合いやカラーリングを追及しているのには、どんな理由があるのだろうか。
「作業スペースに並べているものを見てもらえればわかると思うんですが、オモチャが好きなんです。フィギュアだとかプロダクトから影響を受けることも多くて。小さい頃から悪役がカッコいいと思う少年だったんですね。アニメでも敵のキャラクターに魅力を感じるタイプで、だからボクが描いているグラフィックにも、決して正義感がなく、ダークヒーローっぽいノリで制作しています」。
自身が着る洋服にしてもそうだが、ベースとなるカラーはブラックで、そこにビビッドなグリーンやピンクなど好みの色を足していっている。棚に並んでいるオモチャはドラゴンボールのフリーザや、ドラゴンクエストのミミックなどなど。なるほど、パープルやグリーンなど、特徴的な色味の“悪い”キャラクターが勢揃いしている。こうしたオモチャのセレクトは、基本的に見た目でジャッジして家に連れて帰っているのだそう。キャラクターデザインから、自分の好きなものを選んで並べ、自身の発想の一部としているのだ。
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![](https://ollie-magazine.com/admin/wp-content/uploads/2020/05/boilerroom1-e1604468839453.jpg)
左_昨年11月にDJ CHARIがリリースしたEP『INNER CHILD』のアートワーク。 右_BOILER ROOMのロゴデザイン。
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![](https://ollie-magazine.com/admin/wp-content/uploads/2020/05/edgehouse-e1604468833873.jpg)
左_THE LAST BATTLEと名付けられたグラフィックデザイン。 右_DARUMA(PKCZ®️)とJOMMYがレジでエントを務めるパーティ、EDGE HOUSEのメインロゴ。
裏原の文化から吸収した
デザインとカルチャー
取材で訪れた自宅兼アパートには、〈A BATHING APE®︎〉のアイテムが多数あったのも気になるところ。「NIGO®さんが手掛けられていた頃のBAPE®は、服はもちろんパッケージひとつ取ってもカッコいいし、高校の頃は絶対的なムーブメントだったので、やっぱり今でも好きですね。でも、BAPE®は入り口的な存在で、自分が大きな影響を受けているという点で言うと、スケシン(SKATE THING)さんなんですよ。若い頃は、それこそスケシンさんのインタビューが掲載されている雑誌を、片っ端から買って読んでいました。今でも、そのクリエイションが大好きですね」。
A BATHING APE®というブランド名や、アイコンのエイプヘッドをSKATE THINGさんが考案したというのは有名な話。コラージュやアナログと、デジタルを行き来するようなハードコアな表現は、現在のSKATE THINGさんのスタイルの1つで、GUCCIMAZEはそうした部分にも影響を受けている。コーネリアスが90年代に限定生産でリリースした、SKELTONAPEポータブルレコードプレーヤーは伝説的なアイテムとして語り継がれていて、そのデザインもSKATE THINGさんが手掛けており、これが発売されたのは90年代前半の原宿ストリート黎明期。そんなレアアイテムももちろんGET済みだから、その思い入れはハンパじゃない。
そんな音楽繋がり(?)と呼んでいいかわからないけれど、BOILER ROOMのロゴやマーチャンダイズのデザインも手掛けており、HIPHOPカルチャーとの親和性も感じるのもポイント。自身もDJをやっていて、その繋がりから知り合ったアーティストのジャケットなどのアートワークを手掛けることも多いそうだ。
「HIPHOPはもちろん好きなんですが、そこに特化したアートワークを作っているつもりではなくて、そのシーンにいる人に自分のグラフィックが刺さっているのが現状なのだと思います。特に海外からのオファーが多いんですが、それに追随する形で徐々に日本でも受け入れられるようになってきたと感じています。最近では自分のスタイルに似たデザインを見かけることも多くて、方向性を変えたいと思うこともありますね。まだ未定ですが、今後は文字を立体として見せたいとも考えています。2Dから3D、ないしはその間、みたいなことをやれたら面白いかなって。あとは映像も本格的に制作していきたいでね」。
ある意味、逆輸入のような形で日本に知れ渡っていき、奇抜でアグレッシブでありながらも繊細なタッチで描かれる”ワルい”グラフィックは、今後さらに音楽やファッションシーンで話題となるはずだ。
GUCCIMAZE行きつけの小料理屋、渋谷の百けんのポスターデザイン。お店では彼のポスターがストックされており、その場で買うこともできる。
左_skydiving magazineに提供した作品は、花粉症をイメージしメイク。 右_オリジナルのフォントデザイン。AからZの文字が並ぶ。
お気に入りのキャラクター
オモチャがギッシリの空間
GUCCIMAZEの自宅兼アトリエには、自身のルーツとなるものがギッシリ。ストリートにオモチャ=カッコいいという概念を生んだ〈BOUNTYHUNTER〉のオモチャや、ミッフィーを作ったディック・ブルーナのキャラクター、ブルーナボンボンのブラックなどをレイアウト。作業部屋のラックに並んでいるフィギュアを見てもわかる通り、ダークなプロダクトが多い。
部屋の至るところにある星のカービィは「見つけたら買わなくてはいけない」という掟を、自身に課しているという因縁のお気に入りのキャラ。移動手段として使っているチャリには、マナー通り繋がりのあるブランドやクルーのステッカーをボム。作業スペースには3色のライトを構えて、空間もダークな雰囲気に。
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![](https://ollie-magazine.com/admin/wp-content/uploads/2020/05/MG_2522honban-e1604468769655.jpg)
- Photo _ Takaki Iwata
- Text _ Ryo Tajima
- Design _ Takafumi Iwatsuka
GUCCIMAZE
1989年生まれ。東京を拠点に活動するグラフィックデザイナー。世界中のファッション&音楽のーンにおいて、アートワークのディレクションやデザイン提供を行っている。
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