MUSICOTHER2020.05.4
ROOM IS STYLE
ストリートの遊び心を詰めこんで
VOL.03
溢れるほどのTシャツと
フライヤーが象徴
MILES WORD(BLAHRMY)
Ollie 2019年1月号 Vol.237より
SHEEF THE 3RDとのユニット、BLAHRMYで名を馳せ、ソロや客演、Olive Oilとタッグを組んだU_Knowの活動でシーンにドープを注入し続けているラッパーのMILES WORDさん。彼が居を構えるのは、“レペゼン”し続けている地元であり、拠点とする“MOSS VILLAGE”こと、神奈川県藤沢市。住み慣れた街からHIPHOPを通してメッセージを発信し続け、その自宅には溢れるほど多いモノと同じだけのストーリーが。
ROOM Questionnaire
1.居住エリア / 藤沢北口
2.居住年数 / 6年?
3.家賃 / ギャランティ
4.広さ / 広め
5.住んでいる家&街を選んだ理由 / 地元
6.駅から家までの距離 / 3分
7.部屋のお気に入りポイント / ホッツ
8.部屋の改善したいところ / 物が多い
9.次に住みたい街 / Geep Space
10.カッコいい部屋に住んでいる友達 / Mr.G
自分たちのフライヤーと
レコードが部屋のシンボル
多くのサーファーやスケーターが集まる鵠沼海岸や、観光地の江ノ島があって、湘南エリアの中でも人気が高い藤沢市。海と都心部へのアクセスが良く、中心となる藤沢駅の周辺には昔ながらの商店街が点在していて、住み心地が良さそうな街だ。そこで育ったラッパーのMILES WORDさんは、フッドを“MOSS VILLAGE”と呼び、今も変わらずに暮らしながら、活動の拠点にしており、藤沢駅から徒歩10分圏内の好立地にあるのが彼の自宅。
「そろそろ引っ越したいですね。できれば、アメリカとか行っちゃいたい」と、話す部屋に一歩踏み入れてみると、そこにはHIPHOPに関連したアイテムが所狭しとディスプレイ。MILES WORDさん個人やBLAHRMY、所属レーベルDLiP RECORDSの歴史を感じるモノから衝撃を受けたU.S.HIPHOPの音源などがずらりと並ぶ。「引っ越してきた当時、HIPHOPに囲まれた空間にいたいって思っていたんですよね。今となっては、逆に何にもない部屋もいいなって思っています」。
まず目に留まったのは、自分たちが出演したパーティのフライヤーや、盟友たちがリリースしたアルバムのポスターなどが一面に貼られた収納の扉。「この中でも古いのは、自分たちがやっているパーティ(今年10周年を迎えた、DLiP RECORDS主催の『BLAQLIST』)のフライヤー。それより昔はコレ。韻踏合組合が主催しているMCバトル『ENTER』に出場するために大阪まで行った時の。確か、19歳くらいだったかな?」と、貼られたフライヤー1枚1枚から思い出が蘇ってくる。SNSでの告知が主流になった現在は、フライヤーを紙に印刷して配っているイベントが減ってしまったけれど、フライヤーは飾ることができる立派なアートでもあって、その良さを再確認させてくれる。
その上に並んでいるのはレコードで、DLiP RECORDSからリリースされた自分たちの作品だ。奥からリリース順に飾られていて、ここもMILES WORDさんの歴史を感じさせるポイント。彼が飾るフライヤーとレコードに共通しているのは、デジタルではなくアナログで大事に残しているということ。やっぱり、どんなにデータが便利だとしても、手元にモノとして残しておくことが大事なんだと改めて気づかされた。
棚の中のDVDやVHSから
MCとしての姿勢を学んだ
「高校生くらいから集めはじめました。90’sのレコードが多くて、ウータン(Wu-Tang Clan)やブーキャン(Boot Camp Clik)、DJ Premierあたりが好きで、自分のスタイルにも強く影響を受けています」と、棚に入りきらないほどのレコードを眺めながら話してくれた。
特に思い入れが強いレコードを訊いてみると、「あー、難しいな……」とつぶやきながらもピックアップしてくれた。それは、Wu-Tang ClanのリーダーRZAの弟、9th Princeが所属するクルーKILLARMYの『Fair, Love & War』。「当時あまり見かけなくて、見つけた時にブチ上がったレコードです。ラップをはじめた当初にクラいましたね」。
さらに、こんな話も。「D.L.I.Pは最初、全員合わせてBLACK LIST POSSEって名前だったんですよ。BLACK LISTの中のARMYで、“BLAHRMY”って相方(SHEEF THE 3RDさん)が言いはじめて。それを聞いてKILLARMYに響きも似てるしいいんじゃない?ってなったんですよね笑。意識してあやかった訳じゃないけど、なんとなくKILLARMYはルーツのひとつでもあります」と、BLAHRMYのネーミング秘話に繋がった。
ターンテーブルの隣には、DVDとVHSが収納された棚が。そこには、映画やお笑いのDVDが混ざりつつも、HIPHOP関連がほとんどを占め、アーティストたちのドキュメンタリーやライブ映像など、国内外の作品が揃う。「この『MC』ってDVDは、RAKIMやQ-TIPとかが出演していて、MCとしての姿勢を語る映像作品。これでKRS-ONEが話していたことは、今もステージに立つ際の心構えになっているんですよね」。
仲間たちとの思い出と共に
休息のひと時を過ごす
すべてのウエアは、シルバーラックやコートハンガーに収納することができずに氾濫していて、一部は床に畳んで置いているほど。「イベントやクルーのTシャツをもらうことが多くて、溜まっていくんです。でも、捨てるわけにはいかないから、服屋みたいになっちゃっています」。
その収納スペース以外に、アウターやキャップが別の場所に見せる収納として飾られている。「キャップは、自分たちで作ったものと、もらったものがほとんどで、その中でもお気に入りを飾っています。こっち(窓際)にあるコーチJKTは、BLAHRMYのファーストアルバムをリリースした時に作ったもので、その隣はソロのファーストアルバムと合わせて作ったもの。この2着はよく着ているから、入れ替わることもありますよ」。
その他に、Wu-Tangがファーストアルバムをリリースしたレーベル、Loudのシャツなど、貴重な1枚や大事にしている1枚がターンテーブルの前に飾られていて、思い入れが強いウエアやキャップも、インテリアの一部として活躍中。
この部屋の中で唯一、大事に飾られている写真がレコード棚の上にあって気になった。「これはダイナリーの『BEDTOWN ANTHEM』のPVを撮影した時の写真と、BAYSIDEではじめてライブをした時の写真。初期衝動が溢れてますね笑。ちなみに、その後ろにあるのは丸ちゃん(※イベントのフライヤーやアルバムのジャケもデザインする、DLiPのデザイナー)が作っている“ホッツリマンシール”っていって、藤沢の仲間たちがビッ○リマン風のデザインになったシール。第2弾が完成して、12月23日のBLAQ LISTで販売されるそうです」。
これだけHIPHOPに囲まれた部屋で生活をしているなら、どこを見てもインスピレーションが湧いてきそうだし、リリックを書くには最高の環境で、製作に没頭できそうと思ったら「前までは家でリリックを書いていたけど、今はDLiPのヤサで書いていて、完成したらそのまま録っているから、ここでは製作をしないんです。だから、家にはほとんどいなくて、家にいる時は、音楽を聴くか、映画を観るか、お酒を飲むか、寝るくらい」。でも、それがONとOFFのスイッチになって、しっかりと切り替えができそうな気がする。
余白がないほどモノが詰め込まれている部屋だけれど、その9割以上が自分の大好きなHIPHOPに繋がっているから、居心地が悪い訳なんてない。しかも、フッドに関するモノが多数置かれているところに地元愛を感じる。ここはまさに、MILES WORDさんだけの“HIPHOP部屋”だ。
- Ollie 2019年1月号 Vol.237より
- Photograph _ Takaki Iwata
- Design _ Takafumi Iwatsuka
MILES WORD
黒さが際立つ正統派ラッパー。
ソロではもちろん、BLAHRMYやU_Knowなどのユニットの一員としても活躍中。
Olive Oilさんとのジョイントアルバム『BELL』がリリースされた。
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