FEATURE2020.08.5
とっておきのバンドTだからこそ
ガンガン着続けるという姿勢
– YUSHI –
東京の夜を代表するスケートクルーのKP TOKYOは、SNSやWEBで掘ってもいまだに情報の少ない謎の存在だ。しかし、だからこそ彼らによる映像作品やグラフィックに込められた、社会に中指を立てるかのようなクリエイティブには、より強い説得力とリアリティが宿る。そんなKP TOKYOのメンバーであるYUSHIさんが選んだのは、彼らのグラフィックのモチーフにもなっている、あのバンドTシャツ。
人種差別やドラッグを歌う
DYSTOPIAな世界観に惹かれて
「これは4,5年前に買ってから、ずっと捨てずに着てますね。新品の白のソックスとか履いてるとよく目立つんですが、実は超黄ばんでるんですよ。でも着ちゃうみたいな感じで、まじで捨てれないっす」。そう話しながら紹介してくれたのは、DYSTOPIAというハードコアパンクバンドのTシャツ。バンド名を直訳すると”暗黒郷”で、その名の通り不気味すぎるベースの音や、人種や薬物、環境保護といった社会的な問題のリリックが印象的だ。かなりアングラなバンドだけど、KP TOKYOが手掛ける『From the sewers of – LINDA – の下水道から』などの映像作品からも分かるように、既存の社会へ疑問を訴えかけるスタンスがリンクしている。「このバンド自体はずっと昔から好きで、NYのスケートビデオで好きなスケーターが着ているのを見て、思い出したかのように衝動買いしました」。普段から海外のバンド関連のTシャツを着ることが多いから、ショップよりもネットで探して買うのがいつもの光景。「90ドルくらいで結構安かったから、おそらくブートなんだけど、それもどうでもいいみたいな(笑)」と、あまり細かい部分は気にしておらず、そんなスケーターらしくラフにTシャツを楽しむ姿から、言葉では言い表せないYUSHIさんのカッコよさが滲み出る。このTシャツのデザインを見てみると、実験台に載せられたチンパンジーが両腕を拘束され解剖されているという、まさにDYSTOPIAな世界が映し出されている。この上にレイアウトされたロゴはKP TOKYOのTシャツのデザインモチーフにもなっていて、KP TOKYOではあえてブラックオンリーでリリース。大好きなTシャツは大事に飾ったり保存しておくのではなく、着続けることがYUSHIさんの捨てられないTシャツへの愛情表現だ。そしてこのTシャツには「力仕事ばっかりやってた頃に買ったんで、“頑張るぞ”とか“もっと金くれよ”みたいな、ハングリー精神が響いてたのかもしれないですね」と、手に入れた当時の思い出も染み付いている。
- Photograph_Ryohei Anbo
YUSHI
KP TOKYOに所属するスケーターであり、デザイナー。ブランドやショップや雑誌にもデザインを提供しており、幅広く活動している。ちなみにDYSTOPIAで一番好きな楽曲は『Population Birth Control』。
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