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無限のアイデアと実現するパワーで<br>時代をつくるアーティストたち<br>VOL.04<br>DF. SQEZ

古墳時代の土師器に描かれた作品

無限のアイデアと実現するパワーで
時代をつくるアーティストたち
VOL.04
DF. SQEZ

Ollie 2019年4月号 Vol.240より

 

 

すべては目にした人の
記憶に残るボムのために

 

「SQEZのタグの下で~」と東海のラッパーがRAPするように、名古屋を拠点に長年活躍し続けるグラフィティライターのSQEZ。グラフィティと言えば、屋外の壁やキャンバスに描くことが多い中、SQEZが選んだのは長い時間をかけて経年変化して生まれる“古物”。すべては目にした人の記憶に残るため。SQEZのボムは終わらない。

古い物と新しいことの
時間のコントラストを表現

グラフィティって聞いて、イメージすることはなんだろう?街にスプレー缶で描かれたタグやスローアップと呼ばれるものや、ステッカーの数々。あとはキャンバスに描かれた作品に、服に落とし込まれたデザインなんかをイメージする人が多い気がする。しかしSQEZが描くのは、なんと弥生土器や金箔と裏紙が時間をかけ偶然貼り付いたものなど、いわゆる古物と称されるもので、グラフィティの固定概念をぶち壊す。

「(今回素材に選んだ)弥生土器は、割れていたり派手に修復しているやつで、骨董的にはジャンク扱いで価値はそんなになくて。値段的にも、めちゃくちゃ高いモノではないんですよ。素材になるべく馴染むようなものを選びながら、アクリルや日本画で使うようなベンガラ、鉱石から作るような昔から使われる塗料も使ったりして描いています。古いものが好きで、元々持っていたものを使ったり、トトトトという民具や考古を主軸としたWEBサイトを展開する旧友の小野田に、“材料になりそうなやつがあったら買っておいて”とお願いして集めてもらったりして。

古代壁画とか土器に描かれているようなモチーフって、けっこう自身のグラフィティと通じる部分が大きいんですよ。どちらも自分たちの文化や風習、個人の意思や思想を見た人に伝えることと、後世に残すことを目的としたコミュニケーションツールだったと思うし。民芸品とか、土地とか文化に根差していて、昔からいまだにずっとあるものが好きなんですよね」。

古いものが好きで、グラフィティとリンクする部分があるとはいえ、実際にグラフィティを古物に描こうという発想は面白く、アートの自由さやストリートの可能性を感じずにはいられない。

「グラフィティって一言で言っても、(グラフィティシーンには)色んな人がいて色んな側面があるし、グラフィティが好きな人は(作品の好き嫌いに関わらず)一応チェックしてくれたりするじゃないですか?だから他とは違った角度から、グラフィティに興味がない人に知ってもらうのが、自分は一番面白いと思っていて」。

そんな考えの上で生まれた作品の展示タイトルは“everything is illuminated”。「日本語で“すべてはマボロシ”って意味で。(古物は)退廃感とか、何百年、何千年前のものがいまだに残ってたりとか、そういうところが魅力なんです。グラフィティは消されることを前提に描いているので、そこの儚さみたいなのは一番考えたりしますね。だから残っていることに意味があるし、そういうところにも古物への興味が湧くんだと思います」。

長い時間を経て、風合いを変化させながら残ったことで価値が生まれる古物と、陽の光と雨風の影響や人の手によって変化する、街に描かれたグラフィティ。時間を経て価値が生まれるものと、時間が経つといつか消えるものという、“時間”の相反する要素が、SQEZからのひとつのメッセージ。そして、SQEZが生み出すすべての根底には、グラフィティがある。1997年ごろより描き続けて20年以上、その想いが衰えることはない。

「“一番何がしたいか?”って聞かれたら、ただボムがしたい、グラフィティがやりたいってだけで。絵を描くのももちろん好きですけど、やっぱり街に描くのが一番です。グラフィティのイメージって、いまだによくないじゃないですか?軽く見られるというか、犯罪っていうのはもちろんあるんですけど、それ以上に純粋なものでもありますし。10年前とか20年前に比べ(グラフィティは)やりにくくなってきていて、規制が厳しくなってきているし、街も美しくない企業広告とかは増えるばかりですが、なにかときれいにして描ける場所も減ってきているのが現状です。時間と手間をかけた作品を描けた時の満足感はもちろんありますけど、それと街で自分の狙った場所にいいスローアップが描けたり、いいタグが一発描けた時のテンションって、同じくらい高いんですよ」。

最終的にグラフィティへ
目を向けてもらうために

SQEZが街に描くグラフィティは、タグやスローアップの文字もあるが、象徴的なのはトライバル的な要素を感じるタコの足を彷彿させるようなモチーフ。それは見た人に“これ、なんだろう?”と思わせるインパクトを放っている。

「最初は普通に、名前をタグでボミングしていたんですけど、始めた頃からそれだけじゃグラフィティ好きにしか読めないし、普通の人の目を引くことはないとずっと思っていて。(SQEZがグラフィティを始めた頃は)シーン自体が新たなアートフォームを模索していた時代でもあったと思うんですけど、誰が見ても“なんだあれ?面白いな”って目に入って、気がついたら刷り込まれているっていうものが描きたくて。表に見えるだけじゃなく、意識的に刷り込んでいきたいんです」。

その言葉通り、今回の展示のために制作された作品も、SQEZを象徴するモチーフや、覆面をした女性だったりマスクをしてマントを被った人物など、グラフィティに対してイメージが膨らむようなものばかり。

「普段(グラフィティに)興味がない人に、どう興味を持ってもらうか。きっかけはどうであれ、最終的にグラフィティに目を向けてもらいたくて、そうなれば自分のやっていることに意味があるのかな、と思うんです。見た人が、自分が作品に込めたメッセージや意味と違う部分に反応してくれても全然いいですし、むしろ違ったら“そこに反応しれくれたんだ”って、自分にとっては新たな発見ですしね。最初に描き始めた時は、自分がただ描きたいってだけで、見た人が良いって言ってくれるなんて全然思っていなくて。展示をして作品を買ってくれる人がいる事はいまだに不思議に思うし、もちろん嬉しいですけど“なにが良かったんだろう”って考えますね(笑)」。

SQEZの作品や会話の中から感じることは、グラフィティへの純粋な想い。やっぱりアートはビジネスライクなんかじゃなく、作り手の純度が見る人を感動させたり、言葉にできない感情を沸き立たせる気がする。

「グラフィティや作品は、結局“対自分”の話だと思うんです。自分の気持ちよさのために描いているのも大きいし、ひとつのジャンルに特化して突き詰めるカッコよさはあると思うんですが、自分はその時の気分でころころと変えるのが好きなタイプで(笑)。ちゃんと美術を勉強したことがあるわけでもなく、なにか技術が突出しているわけでもないので、常にチャレンジしながらなにか新しいものを作りたいんです。だから、止められないんですよね」。

  • photo _ Takaki Iwata
  • design _ Takafumi Iwatsuka

DF. SQEZ

EVILDOTSCREW (EDC)所属のグラフィティライター。仲間とのグループ展や、ソロでの個展なども不定期で開催。そのスキルとセンスは、同じグラフィティライターやアーティストたちからも高い評価を得ている。

 

 

そして名古屋MAD BOXXXにてDF. SQEZさんの個展が5月23日(土)から6月7日(日)まで開催中。お近くの方は是非足を運んでみてほしい。

 

 

DF.SQEZ SOLO EXHIBITION
問 MAD BOXXX
〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄5丁目4-22
13:00 〜 19:00 不定休

DF. SQEZ

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