
Toyaさんがリリースしたヴィジュアルブック『We Talk About Blue』に掲載されている作品。日常でよく目にするモチーフをブルーに彩っている。
OTHER2020.05.31
無限のアイデアと実現するパワーで
時代をつくるアーティストたち
VOL.03
Toya Horiuchi
Ollie 2019年4月号 Vol.240より
生活の延長線上の感覚を
グラフィックとヴィジュアルで
アートが素晴らしいのは、国や年齢、時代や宗教などを超えて人を惹き付け感動させるパワーがあることがひとつの理由な気がする。人種の坩堝であるNYを拠点に活躍するToya Horiuchiさんは、グラフィックとヴィジュアルアートを武器に世界で挑戦するアーティスト。アートが身近にある街で、今日も孤軍奮闘する1人の日本人の活動と想いを。
NYを制作の場所に選び
今では完全な自分の拠点へ
本誌読者には、KID FRESINOやGRADIS NICE & DJ SCRATCH NICEなどのジャケットアートワークに、〈Hellrazor〉のデザインを手がけていることでも知られているToyaさんが、アメリカに渡ったのは18歳のとき。叔父が住んでいたで学生生活を送ることがキッカケで、その後NYへ移住。ちなみにLQQK STUDIOで働くようになったのは「4年ぐらい前にシルクスクリーンを教えてほしい」と、主宰のAlex Donderoに依頼したことがキッカケだった。現在では、仕事や友人など様々な活動基盤がNYで出来上がり、自身のスタジオも2017年から手に入れたことから、NYで作品を制作し続けている。
そんなToyaさんのアイコニックなアイテムであり、その名を広めるキッカケのひとつになったのは、NYをテーマにしたステッカーだろう。上で掲載されている、ニューヨーク・ヤンキースのロゴをサンプリングしたステッカー“Bling NY sticker”は、Supreme NYのショップにも置かれていたことがあって、大きな話題となった。
「小さい頃からシールやステッカーが好きだったんですよ。ニューヨークシリーズは、自分がNYにいるからですね。ニューヨークにいるからこそ言えることですし、逆に客観視して“ニューヨークとは?”とも、言っているのかもしれません。それをステッカーで表現してるのは、小さいし、みんなステッカー好きだから。昔はコミュニケーションツールのつとして考えていたんですが、今では1番身近な自分のアウトプットツールであり、作品なんです」。
シルクスクリーンを使った
作品と表現へのトライアル
そんなステッカーに代表されるグラフィックアートだけではなく、ヴィジュアルアートも表現する。その代表が、2017年に発表したアートワーク集『We Talk About Blue』だ。タイトルにある通り、様々なモチーフがブルーに統一されてヴィジュアル化されているのが印象的。
「(ブルーを選んだのは)ジャズからのインスピレーション。特にブルーノート、ブルー=クールという考え方の繋がりです。ただ、青の捉え方は人それぞれです。清楚、清潔、若さの意味もある反面、衰えや怯えの意味にも取れるので。ピカソやイブ・クラインも青を使っていましたから。選んだモチーフには特に明確な理由はありません。制作しているときに思いついたものや、見たイメージをチョイスしただけです。ただ、そこに対して人は既成概念があるので、見慣れたものが青になるだけで、まったく異なるストーリーを思い描くんです。つまり、誰に聞いても正解はないし、逆に全てが正解ということです。1つ注意していたことと言えば、使うイメージは高画質で、ヴィジュアル的にすでに完成されたものであることです」。
そして現在は、シルクスクリーンを使った作品を新たに取り組み中。「シルクスクリーンはペインティングのような、偶然性の要素が少ないですよね。良くも悪くもそこが良いところだと思っています。今、制作しているシルクスクリーンを使った作品の元のモチーフやイメージは、すべてステッカーからきているんですよ。ステッカーはデジタルで作っているけど、今回の作品はすべて自分の手でイチから刷っています。今、自分が出来る手仕事での作品作りはこれしかなくて、スゴく大変だけど、とても満足しています」。


作品を制作する行為は
特別ではなく生活の中に
そんなグラフィックとヴィジュアルでアートを表現しているToyaさんのルーツは、幼少期の体験にあるようだ。「1番古い記憶で覚えているのは、6歳のときに自分から町内の絵画教室に通いたいと、両親に伝えたことです。キッカケは、単純に絵を描きたかったんだと思うんです」。その後、生きていく過程でグラフィックにおいては「SupremeやaNYthingで好きなグラフィックは、全部エリックが作っていて」という理由から、エリック・エルムスに1番大きな影響を受けた。「はじめてシルクスクリーンを知ったのは、この2人がそれを使って表現していたということを知ったから」という繋がりで、WTAPSの西山徹さんとSK8THINGさんからの影響があったと言う。
では今現在、NYで制作をするにあたって、どういったことが想像の源になっているのだろうか。「基本的には何でも、です。ついこの間、道に落ちていたペチャンコに潰れたファンタの缶を見て、“良い色だな、今度はオレンジとネイビーとグリーンの光沢のある何かを作りたいな”と思ったばかりです」。Toyaさんが生活の中で欠かさずに行っていることは、街、人、モノを見ることの重要性を考えた上で、歩いて自分のスタジオに向かうことなのだそう。「制作に特別な儀式や時間はなくて、日々の生活の延長線だと思っています。なぜなら制作も日々の生活の1つだからです」。
そして、今回のテーマであり、Toyaさんの生業とも言えるアートについては「自分、または自分の役割です。それは考えや価値観だけではなく、生活も含めたトータルなもの。作ることしか出来ないのなら、それが自分の役目なのかもしれませんし、最終的に残ったのが今のスタイルだったんです。つまり、イメージのプリントやグラフィックなどです。あとは、単純に他のクリエイションの才能がなかっただけかもしれませんね(笑)」。
日本とNYではアートに対する考え方も異なるだろうし、そこにはギャップもあるはずだ。「デカいモノを見たらワクワクするし、綺麗な宝石を見たらドキドキするのと一緒で、アートをもっと気楽に楽しめればいいと思いますね。知識がなくても(あれば、なお良いですし)アートを見に行くことを楽しむ。楽しんでいる人がいなきゃ、アートなんて何の価値もないじゃないですか?」。
- photo _ Koki Sato
- text _ Ryo Tajima
- design _ Takafumi Iwatsuka
Toya Horiuchi

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