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NYのアングラとメジャーを繋ぐ<br>ストリートアートのパイオニア<br>Eric Haze

NYのアングラとメジャーを繋ぐ
ストリートアートのパイオニア
Eric Haze

スケートやグラフィティ、あらゆるカルチャーが混在し、多くのレジェンドが誕生した1970〜80年代のニューヨーク。誰もが知っているKeith Haringもまたその一人だけど、今回ご紹介するのは、同じくNYで育ったアーティスト&デザイナーのEric Hazeだ。星や矢をモチーフにしたアイコニックなアートから、名だたるラッパー達のジャケットデザインに渡るまで。カルチャー創世記からシーンのトップを走り続けてきた彼の、今までとこれから。

フッドの仲間と作り上げた
NY発祥のアングラカルチャー

「かなり昔のことだから思い出すのが難しいな〜笑」。
予想をはるかに越える物腰の柔らかさと、ユーモアな表情を浮かべ快く取材に応じてくれたEric Haze。これまでにも、BEASTIE BOYSや、RUN DMC、そしてLL COOL Jのアルバムジャケットを手掛けたり、今も尚世界中で活躍するアーティスト兼デザイナーだ。最近では、モダンファッションを牽引するブランド〈SACAI〉とのコラボレーションや、ラッパーJP THE WAVYのロゴデザインも記憶に新しく、その影響力は世代を超え、ユース世代にも浸透中。時には、街中にグラフィティを残すように、直感的に星や矢をモチーフにしたアートを描いたり、一方では繊細なタッチで街の景色や人を描いたり、モノクロで統一された世界観は見る者の想像力を掻き立て、時にカラー以上に色彩の豊かさを感じさせる。そんな作品達の背景にあるのは、言わずもがな彼が生まれ育ったNYの街並みだろう。まだストリートカルチャーが成立する以前(1970~80年代)の、混沌としたNYのストリートについて。

「確かあれは70年代のニューヨークだったかな。その当時は、今みたいなマーケットや、ファンが増える前だったんだけど、多くの人がスケートボードやグラフィティーに没頭していたんだ。自分も気づいたらそのカルチャーの中にいたよ。NYでは本当に多くのことを学んだと思う。時には、Tony AlvaがスケートしにNYへきたり、〈HUF〉の創設者であるKeith Hufnagelも周りにいたんだ。クリエイターにとって、ニューヨークはとても刺激的な場所に違いないと思う。」

そんなごく自然な流れから、自身のアートやデザインを始めたというEric Haze。今でこそ、ストリートというジャンルがカルチャーに強く根付き、身近な言葉として存在しているが、当時は状況も違っていて、アートやスケートをキャリアとして確率するということ自体マイナーだったという。それでも、彼はニューヨークで活動する事で、様々なカルチャーや人の熱量を吸収し、それを唯一無二のアートへと昇華させていく。

「ニューヨークで地元の仲間と共に『SOUL ARTIST』っていうクルーをやっていて。それがちょうど1975年に終わったんだけど、その時にクルーのリーダーが〈ZOO YORK〉の最初で最後のマガジンをリリースしたんだ。周りの仲間を集めて集会を行ったよ。そして雑誌を皆の前に置いて、これが俺らの未来の形だと話してくれたんだ。当時のNYカルチャーをなんらかの形として発信していけば、自分達の将来を確実なものにできる、アートもスケートも、全てをコントロールできると思ったよ。そして、それを世界中に発信できるとも思った。それから少し経って、クルーのリーダーがマンハッタンの一室で、毎週月曜に集会を行うようになったんだ。ワークショップ的なミーティングだね。それが次第に、街中で話題になっていってね、雑誌の編集者とか、関係者も集まってくる様になったんだ。Keith Haring、Fab Five Freddy、Futura2000もいたよ。」

いつの時代も、ストリートには地元のキッズたちから愛される先輩やヒーロー的な存在がいて、それを見てユースたちが育っていくのが街のセオリー。ティーンネイジャーだったEricにとって、彼のキャリアをここにまでに進化させたのは、盟友や尊敬するアーティストとの出会いだったそう。そして1981年、遂にキャリアを決定づけるある出来事が起こる。

「1981年に、ニューヨークで”NEW YORK NEW WAVE”っていうアートショーに呼ばれて、BasquiatとかKeith Haringらと一緒に個展を行えることになったんだ。彼らと一緒に8ftくらいの大きな絵を展示したよ。そのイベントを通して、自分に自信が持てたし、その先のアーティストとしてのキャリアを決定づけることができたんだと思う。」

まさに、早くにしてストリートドリームを掴んだEric Haze。一見順風満帆に見えたアート人生だけど、実はその背後には数々の悩みや葛藤があったそう。それもそのはず、当時若干20歳のティーンネイジャーにとって、悩みや葛藤を抱えるのは当たり前のこと。一般的なアーティストとは違い、アート業界に対する勉強などはせずスターダムに上り詰めてきた彼にとって、社会の事や、時代の移り変わり、そして環境の変化が本人のアートにも大きく影響を与えていくのである。

時代の逆をいく発想とスキルで
世界を驚かすコラボレーションを

「当時はアートやデザインだけでなく、洋服も作っていたんだ。その時は、あまりにも忙しすぎて多くの作業をインターネットで完結してしまっていた。ある時、その作業自体に嫌気がさして、12年以上住んでいたLAからNYに戻ることを決めたんだ。地元に戻ることで、70年代から自分がやっていたハンドライティングの魅力を再認識することができたよ。世の中では、多くの人がテクノロジーに向かっていたけど、あえて自分はそれとは反対を行って、アナログなスタイルを貫くことに決めたんだ。コンピュータには決まった機能しかないだろ、だけど自分の作品は誰にもコピーできないモノなんだ。」

まさにストリートらしい天邪鬼なマインドを感じさせる彼のスタイルは、自由と反抗心が宿る70年代のNYならでは。そんな才能は、個人の作品に留まることなく、アーティストやブランド、ジャンルを越えて表現するコラボレーションにもつながっている。

「一番最初に出てくるのはやはりBEASTIE BOYZとのコラボレーション。何よりも、自分の手描きの作品を世界中に広める最初の作品だったからとても思い入れがあるよ。あとは、2003年の〈NIKE〉のDUNK LOWコラボレーション。スニーカーのデザインだけじゃなくて、箱まで全てをデザインしたのはとても意味合いのあることだったし、自分が世界ではじめてだったと思う。あとは、パンデミックの時に、USのスキーチームのオリンピックのユニフォームをデザインできたことも感動的だった。自分のデザインした服が、テレビで見れるなんて夢の様だったよ。あとは、ジミーチューとのコラボレーションも、ラグジュアリーブランドとストリートが出会ったという意味では大切なコラボだった。そして、今回の〈Fragment.〉とのコラボも特別だった。藤原ヒロシさんとは、実は30年前にも〈Good Enough〉とのコラボでデザイナーとしてセッションしていたんだ。30年経った今でも、こうやって同じ業界で今も携われていることがとても嬉しいね。」

あげればキリがないほどのコラボレーションを積み重ね、ストリートのプロップスを築き上げてきた Eric Haze。しかし、極限までアートを追求してきたからこそ、今は自分の絵に没頭するよりも、他人の目線や考え方にもフォーカスし始めているそう。

「昔は自分のやっているアートや、ブランドにより興味があって、それを追求してた。だけど、今はもっと、他の人のストーリーだったり、自分と他人をつなげているものに興味を持つようになった。それが今回の作品のポートレートショーにも大きく繋がっている。今回のショーのタイトル=『INSIDE OUT』には二つの側面があって、抽象的な作品は自分の内なるマインドを表現したモノ、そしてポートレートに関しては外の世界、すなわち人との関わりを表現したモノ。二つの側面を一つの会場で、見せるのは初の試みなのでとてもエキサイティングしてるよ。」

いつまで経っても支えてくれるギャラリーやアーティストへの感謝とリスペクトを忘れない謙虚な姿勢と、それをアナログな手法で表現し続けるEric Hazeのアートは、理屈抜きでかっこいいし、観る人に最短距離で伝わる高い熱量が宿っている。アングラとメジャーの境界線を、わかりやすくカルチャーに提示し続けてきたレジェンドの挑戦はこれからも続いていく。

Eric Haze Solo Exhibition

『 INSIDE OUT 』

2022 年12月 09 日 (金) – 12 月 25 日 (日)
Hours: 11:00 – 20:00 (無休)

@SAI
Adress: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
Tel: 03-6712-5706

Left: HUF SKATEBOARDS(SOLD OUT)
Right: BE@RBRICK

  • Photograph_Rina Saito

Eric Haze

Profile
ニューヨークを拠点に活躍するアーティスト兼デザイナー。グラフィティ集団「The Soul Artist」の創設メンバーとしてFutura 2000、LeeQuiñones、DONDI らと共にカルチャーを牽引してきた。トレードマークである手描きのレタリングを武器にビースティ・ボーイズやトミー・ボーイズなどのロゴ、アルバムカバーなどを数多く制作。
@erichazenyc

 

Eric Haze

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