
MUSIC2020.08.27
– YOUTH OF TODAY –
五人五色を等身大のラップに乗せた
“コレクティブ”という憧れのカタチ
Vol.03
Sound’s Deli
自らのスタジオを構える東京・下北沢を拠点に活動する5MCからなるヒップホップクルー、Sound’s Deli。昨年の夏にクルーを結成し、同年12月にJET LIFEを手掛けるアトランタのトラックメイカーCash Fargoをプロデューサーに迎えて1作品目となるEP『¥ellow Ca$h』で華々しくデビュー。その後もGradis Niceプロデュースによるシングル『Platinum Chain』や、2nd EP『RUMBLE』を立て続けにリリースするなど、フレッシュな勢いそのままに東京ストリートを突き進んでいる。そんな彼らを紐解く中で見えてきたのは、U.S.のヒップホップコレクティブに憧れを抱き、等身大の姿をラップに乗せてさらけ出すというクルーのカタチ。
初作だからこそ華々しく放つ
クルーとしての自信と覚悟を
Sound’s Deliはいま東京で遊ぶユースから、徐々に注目を集めつつある個性豊かな5人組。毎週金曜日は決まってクルー全員が集まって作戦会議をしているということで、いつもの集合場所であるという小伝馬町のコーヒースタンド、WENT2GOにお邪魔してみると、早速何やら楽しそうにしている5人の姿があった。メンバーのほとんどが22歳という若さで、それぞれがクルー結成前からソロでラッパーとして活動していたという彼らの出会いは、ほんの1年前の話。
「俺が中目黒のSolfaでevrgreenというイベントをやっていて、元々友達だったgypsy wellにブッキングについて相談したときに、イケてる同世代を呼ぼうってなって、今のメンバーが集まったのが最初ですね」(Moon Jam)。「それからみんなで遊んだり、曲を一緒に作るようになって、クルーでやろうよって話になって去年の夏に結成しました。クルーの名前は、自分がやっているイベントのUdagawa Sound’s Deliからそのまま取った感じです」(Kaleido)。今回の取材場所であるWENT2GOのwent boyさんから「Sound’s Deli=ラップ馬鹿5人組ですね」と聞いていたとおり、取材中も終始仲睦まじく冗談を交えながら談笑している様子が印象的だった。「毎週金曜日は定例で集まっているんですけど、それ以外の日も各々遊んでいます。お酒飲んでクラブに行ったり、最近聴いてる曲をシェアしたり、洋服を買いに行ったり。音楽抜きにしても、仲良くなれるくらい気が合いますね」(gypsy well)。「クールというよりは、楽しいって感じのクルーだと思います。みんな仲良すぎるから、喧嘩もよくするんですけどね(笑)」(G-YARD)。若さゆえにくだらないことで喧嘩することもあるみたいだけど(実は取材当日も!)、それは上っ面だけではなく、腹を割って本音でぶつかり合える関係であるという証拠。
長年一緒にいるかのような親密具合だけどクルーを結成したのは去年の夏の話で、わずか1年足らずでシングル、EP含め4作品を立て続けにリリース。ブーンバップの色が強いものからトラップ調まで幅広く制作しているけど、彼らの楽曲に共通しているのは、どこかU.S.のヒップホップを彷彿とさせる日本人離れしたフロウとバースのノリ。「U.S.のヒップホップにはクルー全員が影響を受けているので、それが必然的に曲にも落とし込まれている感じです。特にJET LIFEとBeast Coastの2組はクルーとしてめちゃくちゃ影響を受けたし、みんな大好きですね」(Tim Pepperoni)。昨年の12月にリリースした1st EP『¥ellow Ca$h』では、彼らが大好きだと語るJET LIFEのトラックメイカーCash Fargoがフルプロデュースをしているけど、そもそもどのようにして話が進んでいったのだろうか?「俺とKaleidoが英語を話せるので、Cash FargoにinstagramのDMでオファーしたらOKをもらえて、速攻でトラックが送られてきました。初めてトラック聴いたときはまじでテンション上がったし、何よりみんなJET LIFEが大好きなので普通に嬉しかったですね」(Moon Jam)。U.S.の憧れている人物にフルプロデュースしてもらうなんていう夢のような話を、SNSひとつで実現できてしまうのは今の時代ならでは。何より1作品目でいきなり海外の大物にオファーをするというのは、クルーとしての自信と覚悟の現れだろう。
NYのベンダーをイメージして作られたというWENT2GOは彼らにとって馴染み深い場所。Sound’s Deliの2nd Single『Platinum Chain』のアートワークやMVにも登場している。
U.S.ヒップホップのスタイルに
東京のフレッシュな空気感を
7/3にリリースした2nd EP『RUMBLE』では、Sound’s Deliのエクゼクティブプロデューサーを務めるMTHA2が全曲をプロデュース。サウンド面からSound’s Deliを支える彼の自宅はスタジオ兼用で、メンバーの溜まり場にもなっている。兄貴的な立ち位置でメンバーと接している彼から見れば、U.S.のヒップホップから受けている影響は音楽面だけではないと感じているようだ。「音楽的な部分はもちろんですけど、ライフスタイルにも影響を受けていると感じています。特にJET LIFEは、仲間といつも遊びまくってるけどカッケーみたいな。遊ぶところは遊ぶんだけど、真面目に曲作ったり、ビシッと決めるところは決めるみたいな、そういうコレクティブ(集団)としてのあり方は彼らの中で憧れとしてあって、影響を受けていると思います」(MTHA2)。
リスペクトするU.S.ヒップホップコレクティブのスタイルをベースに、東京で遊ぶフレッシュな空気感をミックス。+αでそれぞれが抱える不安や野望といった等身大の姿を作品に落とし込んでいるのが彼らの音楽のスタイルだ。そんなSound’s Deli主催のイベントは、いつもフロアがぎっしりになるほど大盛り上がりで、ステージとフロアの距離感を感じさせない、U.S.さながらのライブが魅力。「ライブはみんなで遊ぶことの延長線です」とMoon Jamが話すように、ライブだからといってカッコつけたりしないで、いつものように遊ぶありのままの姿をステージでさらけ出す。「何より俺は楽しいからSound’s Deliをやっていて、まじですぐに喧嘩とかするんですけどそれ以上に楽しいんです。売れてても楽しくなかったらやりたくないですね」(gypsy well)。そう語るように、普段から楽しむことを大切にしている彼らのマインドが、楽曲作品やイベント等のクルーとしてのアウトプットに繋がり、それが伝染するかのように徐々にストリートへ浸透していくことで、いまこうしてユースを中心に注目を集めているのだろう。
最後にクルーとして今後のビジョンを尋ねてみると、その答えはエネルギッシュかつハングリー精神に満ち溢れたものだった。「フレッシュな音楽を作り続けることですね。曲に関して言えば、トラップもやるし、ブーンバップもやるし、そういう枠に捉われずに全部やりたいというのがあります。ヒップホップを1つのカルチャーとして楽しめるクルーになりたいですね」(Kaleido)。「やっとスタートラインに立ったと思っているので、今までもヤバいけどこれからはもっとヤバいぞって感じですね。もっと色んな人に聴いて欲しいし、色んな人をくらわせたいし、自分たちでカルチャーを作り上げたいと思っています。将来的にSound’s Deliの色ってこれだよねというのを示していきたいですね」(Moon Jam)。
Sound’s Deli結成前から、メンバーのMoon JamとKaleidoがそれぞれ主催していたイベント『evrgreen』と『Udagawa Sound’s Deli』。現在はクルー主催で定期的に開催され、どちらも会場を埋め尽くすほどの人で盛り上がりをみせている。
- Photograph_Ryo Sato
- Special Thanks_WENT2GO
Sound’s Deli
2019年に結成された、東京を拠点に活動する5MCからなるヒップホップクルー。“We keep delivering delight and delicious sounds”をスローガンに掲げ、楽曲制作に加えてメンバー自らが主催するイベントも積極的に行っている。近日中にニート東京にも登場予定(?)なので、そちらもお楽しみに。@sounds_deli

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