
2025.06.27
日常のワンシーンをアートに昇華する
xiangyuと光岡幸一の対談!!
XiangyuのNEWアルバム
『遠慮のかたまり』の誕生秘話に迫る
4月25日にリリースされたxiangyuの初アルバム『遠慮のかたまり』。”遠慮のかたまり”とは大皿料理などで最後に残った1つを指す言葉だ。日本人なら誰もが目にしたことのある光景だろう。この言葉に着目し、そこからさまざまな方向に想像力を膨らませてクリエイティビティに落とし込んでいった作品が『遠慮のかたまり』。アートワークアーティストの光岡幸一がすべて担当している。そもそも、今作制作のきっかけになったのも、2人の会話が発端だったという。さて、2人は”遠慮のかたまり”に何を見出し、それをアートに昇華させていったのか。そんなクロストークを下北沢の中華居酒屋「まちなか」で実施! 食事をしながら、”遠慮のかたまり”の目の当たりにしつつ会話が進んでいった。
”遠慮のかたまり”という言葉を知って脳天に衝撃が走った
ーxiangyu
絶対に好きだろうとは思ったけど まさか曲になるとは
ー光岡幸一
ーーお2人は光岡幸一さんの個展のトークショーで出会ったんだそうですね?
光岡幸一(以下、光岡):そうですね。2023年に開催した個展『魂心の一撃』のトークショーでゲストにお呼びしたんです。
xiangyu:でも、厳密に言うとそれが2回目だよね。もともと光岡くんのファンだったからラジオ番組で展示の紹介をさせてもらったのが最初の出会いで、その後に個展を開催する時にゲストで呼んでくれたから。
光岡:xiangyuさんは道に落ちているものを曲にしたりしていたので、ちゃんとお話しする前からすごく趣味が合うんだろうなと思っていたんですよ。きっと同じような視点を持っている人なんだろうなと思って。それでトークショーに来てもらって、自分が収集しているものの話をしたり、写真を見せたりしたんです。それが“遠慮のかたまり”の写真だったんですよね。それで2人で盛り上がったっていう(笑)。
xiangyu:そうだったね(笑)。大皿料理で最後の1個だけ残ってる写真を大量に見せてくれてながら、光岡くんが「これは遠慮のかたまりって言うんですけど、xiangyuさんには何に見えますか?」って聞かれてびっくり! その光景に“遠慮のかたまり”って名前が付いていることに驚きながら、私だったら、“遠慮のかたまり”っていうテーマで曲を作るかもってことを、トークショーで言っちゃったんだよね。あのときは脳天に衝撃が走ったんだよね。これはアルバムのテーマになるな! って思った。
光岡:xiangyuさんは絶対に好きだろうなって思ってはいたんですけど、まさか曲になっていくとは思わなかったですよ(笑)。そこから、まずは「ラスイチのピザ」っていう曲ができるということでジャケットのアートワークを担当させてもらうことになったんですけど、すごく嬉しかったですね。“遠慮のかたまり”の写真は1人で趣味みたいな感じでやっていたことだったので、それがきっかけになって何かが出来ていくっていうのはすごく面白いことだなと思いました。
xiangyu:光岡くんが写真を見せてくれたことがきっかけで、プロジェクトとしてアルバム『遠慮のかたまり』の制作がスタートしたから、そのアートワークをお願いするのは光岡くんしかいない! って思ったんだよね。写真だけじゃなくてタイトルのタイポグラフィも描いてもらってアートワークにしてもらったら、すごいパワーを感じられるものになったし。そんな風に、光岡くんのセンスや言葉にすごく惹かれるものがあったから、アートワーク以外にも別のことをお願いしようと思って、ラップで参加してもらうことにしたんです。その曲が「ずっといるトマト」。
ーー「ずっといるトマト」ではフィーチャリングで光岡さんが参加されていますよね。ラップの経験があったんですか?
光岡:いやいや、ないですよ(笑)。作ったこともないしラップしたこともなかったです。でも、なんかxiangyuさんに言われると乗りたくなっちゃうんです。ここでやらないのは人としてダサいんじゃないか? そんな風に思わさせられる強さがxiangyuさんにはあるんですよ。とりあえず一生懸命やれば何とかなるだろうと思って。
xiangyu:いや、もう最高でしたよ~。
光岡:歌詞も20パターンくらい送りましたよね。
xiangyu:そうだったよね! その歌詞の共有の仕方もユニークだったの。普通、ラッパーとかミュージシャンにオファーするとテキストのスクショやワードとかでくるんだけど、光岡くんは1個だけ残ったトマトの写真の上に、スマホのペイントソフトで書いた歌詞のフレーズを送ってきてくれたりしたよね。しかも自由な発想で考えてくれたことが私には面白かった。
光岡:最初はiphoneのメモとかで書いてたんですけど、これで伝わるのかな? って思って、色々と試した結果、写真の上に歌詞を書くのが1番しっくりきたんですよね。それがはまってよかったです。
xiangyu:しかも20個全部がパンチラインでやば過ぎた(笑)。その中から、どの言葉を使うかを精査するのが大変だったんですよ。歌詞の組み合わせは私がやりましたけど、そのベースになるアイディアは全部作ってくれたよね。そんな風に、よくわからないけど、とりあえず自分がやれるやり方でやってみようっていうのは超無敵だと思う。私も音楽を始めた頃は歌詞の書き方なんてわからなくて、どうでもいい小さなことをメモにしていたら、いつのまにかそれが曲になり、だんだんとxiangyuらしいって言われるようになっていったんだよね。その感覚を思い出させてくれて、最高に刺激になりました。あのパートも最初は自分で歌う予定だったんだけど、男性の声の方がバランスいいと思って光岡くんに歌ってもらうことになったっていうのも、今思うとすごくいい流れだったと思うよ。
ーーその他の曲、「はっちゃKO」などのアートワークもすべて光岡さんが担当されたわけですが、何かコンセプトなどを考えて制作を進めたんですか?
光岡:1番大事にしたのは楽しんで作ろう気持ちでしたね。トークショーの楽しい感じからスタートしたことなので、その空気感を全体で表現できるように考えていました。あとは、今まで自分がやったことがないことにもチャレンジして、撮影の感じも変えてみたりしましたね。やっぱり1人で制作してる時とは全然工程が違うんで、それも楽しみながらxiangyuさんのチームと作っていった感じです。


“遠慮のかたまり”に対するスタンスの差をアートワークで表現
ー光岡幸一
余白のある作品 こういうアルバムをずっと作りたかった
ーxiangyu
ーーアルバム『遠慮のかたまり』のアートワークにはxiangyuさんが何人も登場していて、面白いですよね。
光岡:これは、”遠慮のかたまり”に対するスタンスがそれぞれ異なっているxiangyuさんが登場しているんですよ。ちょっと引き気味だったり、絶対に取りに行くぞ! っていう感じだったり、キャラクターが違うxiangyuさんが食卓を囲んでいるというイメージです。
xiangyu:だから、食べたい私もいれば、スマホを触っている私もいたり、ゆるxiangyuもいて、いろんなパターンの私がいるんだよね。”遠慮のかたまり”に対する向き合い方って食卓ごとに変わるし、人によっても変わるから、それを1枚で表現したいねってことで、こういうアートワークになったんです。
光岡:皿に取り残された最後のひと口って、その食卓を囲む全員の遠慮や見栄とかが集約して、感情が乗っかった結果、結晶化したポツンと残っているような感じがするのが面白いと思っていて。その残り方もすごく頼りないような感じもするし、逆にデスゲームで生き残った最後の1人みたいにも見えるし。人の感情とかが交差して形として残るっていうのがすごく面白いんですよね。それを、xiangyuさんと『遠慮のかたまり』を制作する中で改めて感じました。
xiangyu:”遠慮のかたまり”の光景は誰もか見たことがあるものじゃないですか。曲になることって、それくらいのことがいいなって思うんだよね。だからすごくよかったんだよ。私にはすごくいいテーマだったんだ。
ーーアルバムを聴いた人は、自分に置き換えて”遠慮のかたまり”に対するスタンスについて考えるかもしれないですね。
xiangyu:そんな風に人それぞれに感じ方が変わってくる余白のある作品だと思います。私としては、その光景に面白さを感じてアルバムを作ったわけですけど、人によっては「日本人ってこうだよね」って考える人もいるかもしれないし、いろんな方向に思考が派生していくテーマが今作には込められていると思うんです。私が作りたかったのは、白黒ハッキリしていない超グレーな考える余白がある作品だから、それを世の中にポンって放り出せたのはいいことでした。1番やりたかったことがこれでやれた感じがしますし、自分の中での大傑作です。
ーーまさにやりたいことを形にできたわけですね。
xiangyu:そうです。光岡くんとの会話を通じて歌詞が生まれたり、全国にライブしに言って、各地の人としゃべりながら、最後に残ったご飯をどうする? とか、この土地ではなんて呼んでいるの? とか、そういうエピソードを全部メモして、歌詞にも反映させたりしたので、より多くの人とのコミュニケーションを経てできたアルバムだと思いますね。そして、今作をリリースしてから、海外の人からもDMをもらったり、新たなコミュニケーションのきっかけになっているので、そういう意味でも、ずっとやりたかったことを作品にすることができました。


ーー最後に、2人が今後やりたいことは何ですか?
光岡:今回、xiangyuさんのおかげで今までにやったことがないことを経験させてもらって、それがすごく楽しかったんですよ。なので、今まで思ったこともなかったんですけど、バイクの免許を取ろうと思っています。もう教習所に通っていて、2回しか行けていないんですけど、無事に免許取得まで頑張ろうと思います。
xiangyu:いいね! 楽しそう。今作のリリパが7月2日にWALL&WALLであるので、それを成功させたいですね。光岡くんも参加してよ。
光岡:楽しみにしています! 行きますよ。あ、あとサンプラーを触り始めたんですよ。今はまだ遊んでいるだけですけど、それも上手に扱えるようになっていきたいです。
xiangyu:めっちゃいいじゃん! 私もやろっかな?
光岡:やろう、やろう!
xiangyu
2018年9月からライブ活動開始。 日本の女性ソロアーティスト。読み方はシャンユー 。 名前は本名が由来となっている。 2023年11月1日Gimgigamをサウンドプロデュースに迎えAmapiano、Gqomなどを 取り入れたEP「OTO-SHIMONO」をリリース。 また、音楽のみならずxiangyuとファッションブランドPERMINUTEの デザイナー半澤慶樹で主宰する川のごみから衣装を創作するプロジェクト“RIVERSIDE STORY”を立ち上げ、渋谷川編と題し2022年9月に初の個展を恵比寿KATAにて開催。 2022年7月に上映の映画『ほとぼりメルトサウンズ』では、xiangyu自身が主演・主題 歌を担当した。また、同年11月には初の書籍「ときどき寿」を小学館から発売。2024年11月13日に公開した釧路市アイヌ文化を題材にした短編映画『urar suye』に主人公役にて出演、日本国際観光映像祭2025にて旅ムービー部門最優秀賞を受賞。2025年4月には七尾旅人、Kuro(TAMTAM)を迎えたアルバム「遠慮のかたまり」をリリース。
Instagram:@xiangyu_dayo
光岡幸一
愛知県生まれ。左利き。
(最近見たなかで、めちゃくちゃおもしろかったやつ)
・「NANSE チャンネル」復讐ラジオ、しんちゃんずゲスト回
・バキ童チャンネル」アラカク全解説回
・バラバラマンスリー「海外で髪を切るだけの番組」永田敬介回
・「粗品のロケ」持論王の回
photo_Rryotaro Miyasaka
- Photo&Edit_Takao OKB
- Special Thanks_まちなか
INFORMATION
「遠慮のかたまり」リリースパーティー『ore!』
日時:2025年7月2日 (水)
場所:表参道WALL&WALL
開場:18:30 / 開演 19:00
出演者:xiangyu(DJ/Gt: Gimgigam Per: 宮坂遼太郎)、TAMTAM
【チケット情報】
前売入場券:¥4,000 +1drink ¥700
販売期間:4/25 20:00~7/1 23:59
当日券:¥4,600+1Drink¥700
前売購入リンク:wallwall.zaiko.io

RECOMMENDED FOR YOU
-
時計以外の製品を通して伝える
ブランドのアイデンティティ
G-SHOCK PRODUCTS
“OUTCOURSE COLLECTION”2024.03.22
-
Letters
– 2021 May –2021.05.21
-
スケート仲間とハングアウト
2020.10.12
-
セオリーを超えたDIYなカスタムは
チャリが人の生活に寄り添うために
– WOOD VILLAGE CYCLES –2021.06.11
-
あたらしい価値観を武器に
ネクストを走る表現者と共鳴
– LACOSTE L001 –
vol.3 AMAMI2021.09.3
-
母国のクラフツマンシップを
デニムを通して世界中へ再発信
Denim Dealer2025.02.28
-
共鳴する反骨のアティテュード
両者のアニバーサリーを祝して
– Dr.Martens × UNDERCOVER –2020.05.21
-
スケートボードへの愛と反骨精神が宿る
永遠不滅のマガジンロゴを胸に
VOL.06 THRASHER2020.08.6
-
2021年の春夏コレクションの
ポップさの中に隠すOBEYの言葉は
クソな世の中へ向けたピースな想い2021.07.14
-
新インソールを搭載した一足は
ハードに攻めるスケーターの味方
-CONVERSE-2022.09.9