MUSICOTHER2020.05.6
ROOM IS STYLE
ストリートの遊び心を詰めこんで
VOL.04
仕事に繋がる環境作りと
チルアウトできる空間を
Renichi (映像クリエイター / BreatH)
Ollie 2019年1月号 Vol.237より
先日、日本武道館公演を大成功に収めたBAD HOPを中心に構成されたクルー、BreatHの一員であり数々のHIPHOPアーティストのMVを手掛ける、映像クリエイター。そんな、国内HIPHOPシーンを裏方として支えるRenichiさんの、部屋はどのように作られ生活しいるのか?住み続けて3年目という大好きな高円寺の街で、ルームシェアしながら過ごしている自宅に訪問。
ROOM Questionnaire
1.居住エリア / 杉並区
2.居住年数 / 2年6ヶ月
3.家賃 / 約10万
4.広さ / 2DK
5.住んでいる家&街を選んだ理由 / 好きな町に住みたかった
6.駅から家までの距離 / 10分
7.部屋のお気に入りポイント / 割と広いところ
8.部屋の改善したいところ / 気づいたらモノが多くなってしまっているので減らしたい
9.次に住みたい街 / 吉祥寺
10.カッコいい部屋に住んでいる友達 / 特になし
無機質なモノよりも
自然な色や素材を
高円寺駅をおりて15分ほど歩き、住宅街の中を突き進む。時刻は朝の11時、家に到着すると「片付けをするので、もう15分だけ待っていてください」という丁寧な返事が。BAD HOPのパブリックイメージと高円寺という街の雰囲気が相まって、今日の取材者の部屋は相当にスモーキーな雰囲気なんじゃないかとビクビクしながら、玄関を通してもらった。
家には2つの部屋とキッチン、シャワールーム。Renichiさんの部屋は入ってすぐ左手にあるバルコニー沿いの方、この家には住んで3年ほど、学生の頃からの友人とルームシェアしているのだそう。
さて、さきほどの予想に反して、部屋にはウッド調の家具が並び、小物もキレイに整頓されている。朝の日差しが心地よく差し込んでくる空間が広がっており、想像していたのと全然違う。なんだか少しホッとしながら話をした。
「めちゃくちゃ好きだってわけじゃないんですけど、アースカラーが好きなので、自然とそういう家具が増えていったんですよね。特に高級なインテリアブランドのものというわけではなくて、部屋にあるのは大体イケアで買ったものですし、床に敷いてあるウッドカーペットも引越して来た日にニトリで買って、自分で運んできて敷いたものです。ブラックやジェラルミンのインテリアが並んでいるような、無機質でインダストリアルな部屋もカッコいいと思うんですけど、自分の場合はこれくらいの方が落ち着くんです」。
飾っている額には
雑誌の切り抜きを
家に帰ってきて作業を行うときはデスクでモニターを見つめながら、それ以外の時間はソファで漫画を読みながらリラックスしているという。
気になるのは部屋全体に効果的に飾られている、額装された写真やイラストたちだ。「これ、ほとんどが雑誌やフリーペーパーの切り抜きなんですよ。アートポスターなどではなくて、本当に何でもない雑誌の切り抜きで、それを額の形に合わせて無理やり入れて飾っているんです」。
デスク脇に飾られているのはZUSHI FESで配布されていたタブロイド紙だったり、写真だけではなく、Fucking Awesomeのスケーターによるサインがツラツラと描かれたものも飾られていた。これは雑誌で特集されていたページを切り取ったものらしい。
「直感的なものなんですけど、〝なんかカッコいいな〞と思ったら、こうして飾ることが多いですね」という考えのもと、自分の感覚を大切にしながら、部屋の装飾を整えている。お金をかけてアートピースを飾るのではなく、リーズナブルなウッド調の額を雑貨屋で買ってきて、その額のサイズに合わせてスクラップを飾る。どこかU.S.西海岸チックな、ビーチに近い部屋のような空間が高円寺に作られていて、その不整合生がとてもユニークだ。
見渡せばL.L.ビーンやザ・ノース・フェイスなどのアウトドアブランドのウエアやギアもある。もしやと思ったら、やはりキャンプ好きだと言う。「ガチのキャンパーというわけじゃくて、仕事キッカケで好きになったんです。映像製作会社で働いていた頃、キャンプの撮影現場を担当したことが何度かあって。それも、偶然の成り行きだったんです。アースカラーが好きで、オリーブ色のものをたくさん持っていたから、きっとキャンプとか好きなんだろう。そんな風に勘違いされた結果、キャンプの現場が増えたんですよ。キャンプ用品も持っていないのに、キャンプできる人って扱いになっちゃって(笑)。そこから好きになっちゃったんです」。キャンプ用のギアを大量に買い揃えているわけではないが、友人に誘われれば、都合が合うときはキャンプに行くのだとか。
中央線沿線の街に
住み続けていきたい
もう1つ目に入ってくるのが、壁際に置かれている本棚に並ぶ雑誌や漫画。上段にはファッション・カルチャー誌が並び、下段には漫画が大量に並んでいる。「漫画や雑誌が大好きなんですよ。映像の構成や演出を考える際、そこからヒントを得たりすることが多いんです。カッコいい映像を撮りたいと思ったときに、ファッション・カルチャー誌に掲載されているスチールの写真がすごく役に立つんです。だから本屋でもカッコいい写真を見つけたらスマホで撮っておいて使えるときに使う、そんな風に資料的な感じで集めています。漫画から得るのは世界観ですね。漫画が原作で実写化された映画って多々あると思うんですけど、やはり原作のスゴさを感じるんです」。
自分が制作する映像にも影響を与えている漫画は『殺し屋1』。「あり得ないけど、ちょっと現実感がある。ダークでバイオレンスな空気感がありつつ哲学的な要素もある。それが面白いんですよね。いつか、そういうものを映像で作ってみたいと思うんです」。現在ものディレクションを進めている最中のRenichiさんだが、その映像の端々に、もしかしたら漫画や雑誌からインスピレーションを得た表現が含まれているのかもしれない。
そして、本棚横の小棚には、コンポとDVDや書籍が陳列。中には「BAD HOP関連で知っておくべきだと思って」ということで購入した、川崎のルポ本や日本のショートムービーが多数収録されている『Jam Films』、映画では『GO』や『ジョゼと虎と魚たち』など、どれも2000年序盤にリリースされた作品ばかり。この辺りの映像作品群は「DVDを買う文化は自分にはないけれど、部屋に置いておきたい好きな作品」なのだとか。
さて、もっとも気になっていたのが高円寺という場所に住む理由だ。HIPHOPシーンに生きるクリエイターであれば、もっと他の候補地はなかったのか?「東京に出てきて、最初に住んだ街が高円寺だったんです。学生の頃は渋谷で遊ぶよりも吉祥寺や高円寺で遊ぶことの方が多くて、完全に中央線沿線の街が好きになっちゃったんですよ」。
都合上、来年には別の家を探さなくてはいけない事情もあるようだが「結局、中央線沿線しか思い浮かばないんですよね。これから、ずっとこの辺りに住んでいくんだと思います」。
- Ollie 2019年1月号 Vol.237より
- Photograph _ Ryo Kuzuma
- Text _ Ryo Tajima
- Design _ Takafumi Iwatsuka
Renichi
1994年生まれの映像クリエイター。
現在は、BAD HOPと同じクルーのBreatHに所属し、VJなどのヴィジュアルも制作。
2019年はさらに映像の仕事を増やす予定。
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